Facts
カリフォルニア州住民である原告は、病のため激しい肉体的苦痛があり、家でマリファナを栽培し、それを服用することで苦痛を緩和していた。2002年8月、連邦機関が、栽培されていたマリファナをすべて刈り取ったため、このような連邦法の適用が違憲だとして訴えた。
Issue
カリフォルニア州が1996年の住民投票により、マリファナを医療目的で使用することを許す Compassionate Use Act(マリファナの例外的使用許可法)を制定していたのに対し、連邦法ではマリファナの使用をそれ以前から明示的に禁じており、その間に明確な衝突が あった。最高法規条項によつて当然連邦法が優位にあるが、その前提としては、まず連邦法をこのような場面でも適用することが、連邦議会の立法権限内でなければならない。言い換えれば、このような使用も州際通商条項の適用範囲内としなければならない。
Holdings
連邦の薬物規制法を本件のようなケースに適用することも連邦議会の憲法上の権限内である。連邦法が州際通商条項によって正当化されるために は、Lopez判決もいうように、
① 規制対象となる行為の性質が「経済的活動」(economic activity)でぁり、
② それが州際通商に対し相当の関係(substantial relation)をもつか、または相当の影響を及ぼす(substantially affect)ものでなければならない。
本件のマリファナ栽培は経済活動でないように見えるがそうではない。
経済活動とは、商取引(commerce)でなくともよく、製品の製造、販売、消費にあたるものであればよい。
したがって、本件のマリファナの消費も経済的な性質の行為であることに疑いはない。
経済活動を規制対象としている限り、連邦議会の定めた法律に対し裁判所は合理性審査を適用する。
仮に本件マリファナの消費が非経済的活動だったとしても、連邦法自体は、明らかに、より大きな範囲の活動を規制しており、その大半が経済活動であって、かつ州際通商に相当の影響を与え
るものであることは明らかである。
本件の消費はその一部をなすものであるから、連邦議会の立法権限内にないとはいえない。
Note
1995年のLopez判決と2000年のMorrison判決によつて、州際通商条項の解釈には大きな変化がもたらされたが、2005年のRaich判決によつて、その変化にも一定の歯止めがかかった。州際通商条項を根拠にした連邦議会の立法権限は、それが経済活動を対象とする限りきわめて広く認められるが、そうでない場合(経済活動の規制を目的にしているといえない場合)は一定の限界がある。