Summary of the Facts
2010 年3月、オバマ政権が,国民の6人に1人が無保険という「無保険社会」解消をめざして医療保険制度改革法(通称「オバマケア」)を成立させた。
しかし,同法で国民すべてに医療保険加入義務を課した,いわゆる「インディビデュアル・マンデート」(保険加入義務付け条項)が定められたことに対し,フロリ ダ等26の州が原告となって「国民に民間商品の購入を義務付けるのは憲法違反」とする訴訟が起こされた。
連邦地裁・控訴裁レベルにおいて「合憲」「違 憲」の判決がほぼ拮抗してきた。
Holding
2012年6月28日,米最高裁は「(大筋において)合憲」とする判決を下した。Facts
オバマケアでインディビデュアル・マンデートが定められた理由は「逆選択(reverse selection)」を防止することだった。同法では,保険会社に対し「既存症の存在を理由に保険加入を拒否してはならない」と定めていたが,もしイ ンディビデュアル・マンデートを課していなかった場合,「病気になってから医療保険に加入する」行為が蔓延する危険があった。共和党・保守派: オバマケアを葬り去るため、共和党が知事の座を押さえるフロリダ等26の州が原告となって, 「インディビデュアル・マンデートは憲法違反」とする訴訟を起こした。
ホワイトハウスの主張: 連邦政府には,複数の州にまたがって行われる経済活動を規制する権限が憲法の『通商条項』で認められ ている。医療保険というビジネスを規制するに当たって,インディビデュアル・マンデートを課すことは『通商条項』(連邦政府が複数の州 にまたがる通商行為を規制する権限)で認められた権限の範囲内。
連邦地裁・控訴裁レベルでの判断は合憲と違憲がほぼ拮抗,論争決着の場は最高裁に持ち越された。
Issues
インディビデュアル・マンデートは憲法が認める連邦政府の権限を逸脱しているか。Holdings
- 米最高裁は,オバマケア違憲訴訟で最大の争点となった「インディビデュアル・マンデート(保険加入義務付け条項)」について,「連邦政府が持つ徴税権の範囲内」として合憲とする裁定を下した。
- インディビデュアル・マンデートは通商条項で認められる権 限を越え,憲法違反。
- インディビデュアル・マンデートは,具体的には,保険に加入しなかった人に対し国税当局が罰則金を課すという仕組みで運営されることに なっており,これは,憲法が連邦政府に付与するところの『徴税権』の行使にほかならない。『徴税権の行使』という観点から見れば,合憲で ある。