2012年9月1日土曜日

Marbury v. Madison, 5 U.S. 137, 2 L. Ed. 60 (1803)

違憲審査制=司法審査(judiciary review)を確立した判例。

Facts

1789年 連邦政府発足(3月4日)。Judiciary Act制定。連邦最高裁に対しwrit of mandamus(職務執行令状)を求めて訴えることができる(Art.13)。
1797年 第2代大統領アダムズ大統領の下で、連邦派と州権派の対立の激化。
1798年 Alien and Sedition Act
1800年 大統領選挙で州権派(共和派)Thomas Jefferson当選。政権交代。12月 連邦議会(lame duck session) 開会 (選挙で当選した議員の任期は翌年3月4日から開始)。
1801年 Judiciary Actにより、連邦派はその同志を連邦裁判所の裁判官に送り込もうとする。連邦最高裁首席裁判官に John Marshall 就任。任命されたコロンビア特別区のJustice of the peace , Willam Marbury に辞令交付されず。Jefferson大統領の下で国務長官に就任したマデイソンを被告として、辞令交付のためのwrit of mandamusを求めて連邦最高裁へ提訴。マーベリ対マデイソン事件が始まる。
1803年 Marbury v. Madison 判決

Marburyの主張

マーベリは職務執行令状を請求して最高裁に訴えた。
根拠は裁判所法13条。このようなケースでは直ちに最高裁に訴えてよい。

Hodling:

  1. マデイソンが辞令を交付しないことの違法性を批判。
  2. しかし、マーベリはそれでも勝てない。なぜなら、彼が救済を求めるために利用した手続を定める裁判所法13条が違憲無効だから。
合衆国憲法第3編の第2節第2項 「最高裁判所が第1審としての裁判管轄権を有するのは、大使その他の外交使節や領事が関係する事件と州が当事者であるすべての事件」。その他の事件はすべて上訴審としての裁判管轄権を有する。行政府に対する職務執行令状を出すか否かを第1審として裁判できるという規定はない。1789年裁判所法13条は合衆国憲法で認められていない権限を最高裁に認めており、憲法に反している。

Note

  • 事件は敗訴で終わったが、連邦最高裁には違憲立法審査権があるとして、連邦派の支配する裁判所の権威を大きく高めた。
  • この後、マーシャル率いる連邦最高裁が続々と連邦議会の制定した法律の違憲審査をしたわけではない。しかし、先例としてのMarbury v Madisonは残った。
  • Marbury判決自体は、その原因・判決内容からして、政治的な判決である
  • Hayburn’s Case, 2U.S.(2 Dall.) 409 (1792) は連邦下級裁判所の判決であるが、後に連邦最高裁がMarbury v Madison (1803)で違憲立法審査権を行使する先駆けとなった。