Facts
NY州が同州の水域での船舶運送業務について独占権を認める法律を制定し、NYとNJを結ぶ航路での独占営業権を業者に認めたところ、それが1793年の連邦法に基づき沿岸航行の許可をしていることと抵触し、違憲無効ではないかが争われた。
Holdings
- 1793年の船舶営業の許可を与える連邦法は、州際通商条項によつて正当化される。通商は、商取引の手段である船舶に関する規制を含み、複数の州にまたがりうる通商について連邦議会は完全な立法権を有する。
- もちろん、州際通商条項に基づく連邦議会の立法権限が認められない活動もあるが、それは完全に1州内にのみ関わり、他の州に何ら影響を与えない活動であり、かつ連邦政府の介入を必要としない --> きわめて限定的な範囲にとどめた。
- 本件のNY州法は、州と州をつなぐ航路に独占権を認めるものであり、連邦法に抵触する。連邦法の優越を定める最高法規条項により違憲。
Note
- 本判決では、1793年の連邦法の合憲性が主題だったわけではない。NY州法の違憲性が中心テーマであり、その前提として、連邦法の合憲性を確認したに過ぎない。連邦政府が経済活動を広く規制し始めるのは、1887年のInterstateCommerce Act(州際通商法)制定後である。州際通商条項によつて連邦法の正当化が求められる機会は19世紀後半まで多くなかった。初期の州際通商条項の機能は、むしろ州法による規制について連邦法ヘの抵触を見出し違憲とするところにあった。
- 州際通商条項の「通商」の広い解釈。商取引+それに付随する交通手段や通信手段まで含み、さらに州際通商の一環である限り、当然、州内の活動にも及ぶ。
- 本件は、一見、州際通商条項に基づく連邦政府の権限を最大限に広く解釈し、州政府による通商規制権限を最小限にしたかに見える。
- しかし、
- 州政府が州の福祉権能を行使するものとして、通商に影響を与える行為をした場合、それ自体、州の本来の権限行使であるから、それを完全に否定することは難しい。例、1829年のWilson v Black―Bird Creek Marsh Coは、州際通商を妨げるかに見える州の規制を有効と認めた。⇒ ある問題について関連する連邦法が存在しても、それだけで常に州による規制を違憲無効となるわけではない。どのような場合に連邦法に抵触するのかという課題が残る。
- ある州法が州際通商に関連するとしても、それに対応する連邦法が制定されていないケースをどう考えるべきか。州際通商についてはすべて連邦政府が独占的規制権をもつとする立場からは、そのような場合でも州には規制権限がないことになる。だが、連邦最高裁は、そのような単純明快な解決策をとらなかった。一定の場合、州にも競合的な規制権限(concurrent power)が認められるとした。→Cooley v.Board of Wardens(1851)