2012年10月2日火曜日

Youngstown Sheet & Tube Co. v. Sawyer, 343 U.S. 579, 72 S. Ct. 863, 96 L. Ed. 1153 (1952)




Facts
·         Steel Seizure Case(鋼業接収事件)として知られる。
·         トルーマン大統領が、鉄鋼業界のストライキによる朝鮮戦争への悪影響を恐れて、商務長官に命じて鉄鋼事業を接収し国営化した。その根拠は大統領の「固有の権限」(inherent power)。連邦議会も黙認した。
·         本件は、Taft-Hartley Act (タフト・ハートレィ法)の下で、80日間の暫定的ストライキ禁止命令を裁判所で得たうえで連邦議会に緊急事態立法の制定を求め、その後に大統領権限の行使をすることも可能だった。ところが、その方策によらず、大統領の固有権限で同じことができるとして接収に踏み切った。
·         鉄鋼会社が訴えた。
Holding
·         大統領の命令は違憲無効。権力分立に反する。
·         大統領権限のあり方について明白に異なる2の考え方。
·         ブラック裁判官:形式主義的アプローチ(formalistic approach)大統領は憲法または連邦議会が明示的に認めた権限だけを有する。大統領職固有の権限は存在しない。
·         ジャクソン裁判官:機能主義的アプローチ(functional approach)大統領権限をブラック裁判官よりも柔軟に解した。
o    大統領権限は、連邦議会の明示または黙示の授権がある場合、その有効性が最大限に尊重され、逆に連邦議会の明示または黙示の意図に反することを行おうとする場合には、最小の敬譲しか認められない。
o    連邦議会の意図が明確でないケースは一種のグレー・ゾーン(zone of twilight)であり、当該状況の緊急性その他の具体的事情に応じた判断が裁判所に求められる。
o    本件の場合、連邦議会の判断を待たずに大統領権限だけで接収が行われており、それだけの必要性・緊急性があったとはいえない。
o    結論として大統領権限を否定。
Note
·         後に影響力を持ったのは、ブラックのアプローチではなく、ジャクソンのアプローチ。実際に大統領権限を認める必要があるから。