Facts
1938年Fair Labor Standards Act(公正労働基準法)法① 違法な労働による製品の州際通商を禁ずる規定: 定められた最低賃金以下、または定められた労働時間以上で働いた労働者によつて製造された製品の州際通商を禁じた。
② 州際通商を意図した製品の製造に関する労働条件の規制: 州際通商での移送を予定している製品の製造に関し、最低賃金以下または最高労働時間以上での雇用契約を禁止した。この法律違反に問われたジョージア州の製材会社は、この法律が合衆国憲法第10修正の定める州への留保事項を規制するもので、連邦議会の権限外であり違憲だと主張して争った。
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- 法律の合憲性を認め、それと同じ趣旨の法律を違憲とした1918年の先例、Hammer v Dagenhartを明示的に覆し、判例変更した。
- ①は、まさに州際通商を規制するものであり、連邦議会に立法権限があることは明らかである。確かに、労働や製造それ自身はある州内で生ずる事柄だが、現実に州際通商の場面を規律する限りにおいて、憲法の認める立法権限内となる。この判決は、23年前のHammer v Dagenhart判決において多数意見で示された解釈を明示的に覆した。
- ②は、州内での労働や製造を規制しているが、州際通商条項と「必要かつ適切条項」を組み合わせることによって合憲判断が導かれる。
- 州内事項でも、それが州際通商に「相当の影響」(a substantial effect)を与えるから、州際通商の規制に必要かつ適切な範囲で、連邦議会に立法権限が認められる。違法な労働基準で製造された製品の州際通商を禁ずるためには、州内事項であつてもそのような労働契約自体を禁ずることが適切な手段となる。そうでないと、たとえば州の定めた労働基準法に違反する事業者が、当該労働関係で製造される製品はすべて州際通商で販売されるものだという理由で州の規制を免れたり、違法な労働基準での製造が認められる州での製品が、労働基準を遵守する州の製品に対し競争上有利な地位に立つことで州際通商に悪影響を与えることも十分に考えられる。
- 憲法第10修正については、当然の事理(a truism)を述べているだけであり、第10修正は無関係。
Note
- この判決の結果、州際通商条項の意義はそれまでと大きく変化した。州内事項であつても州際通商に「相当の影響」を及ぼす問題については連邦議会の規制が認められ、それに対抗するかに見えた第10修正も、ほとんどその意義を失った。州際通商条項の適用範囲は拡大し、連邦議会の規制できない経済問題はほとんどない。