今回は二重国籍について書いてみたいと思います。
まずは米国の見解について、米国大使館のサイトには概要以下のとおり説明されています(最新情報や詳細は,大使館・領事館にお尋ねください。)。
A.
米国の見解
連邦最高裁判所:
二重国籍は法律上認められている資格であり、二カ国での国民の権利を得、責任を負うことになる。一国の市民権を主張することで他方の国の権利を放棄したことにはならない。(Kawakita.v.U.S., 343 US 717 [1952])
米国法:
二重国籍について言及なし。
出生により二重国籍を取得したアメリカ人や、子供の時に第二の国籍を取得したアメリカ人に対して、成人したらどちらかの国籍を選択しなければならないという規定は設けていない(Mandoli v. Acheson, 344 US 133 [1952]参照)。
米国政府:
二重国籍の存在を認め、アメリカ人が他の国籍を持つ事を認めてはいるものの、その事が原因となって問題が生じることがあるので、方針としては二重国籍を支持していない。
(理由)
① 二重国籍を持つアメリカ人に対してアメリカ国民としての義務を要求する場合に、それがもう一方の国の法律に反するような状況に陥ることもあるから。
② 二重国籍者が海外に在留する場合、米国政府が当該者に対して自国民保護を行うのに支障がでる場合がある。通常、二重国籍者が国籍を持つ一方の国に居る時 には、その国の要求が優先する。二重国籍を認めていない国が多い為、二重国籍者が国籍を持つもう一方の国で困難に遭遇した場合、米国政府が自国民として援 護出来る範囲は極力狭まる。
B.
どちらのパスポートを使うべきか
米国移民国籍法:
一部の例外を除いて、アメリカ人は米国の出入国の際に米国のパスポートを使用しなければならない。国によっては二重国籍者に、その国の(米国でない方の国の)出入国に関して、自国のパスポートを使うよう要請しているが、その事で米国籍に影響はない。
C.
米国籍の喪失
外国籍を自動的に取得すること、又はそれを留保することは米国籍に影響を与えない。
し かし、自ら申請して外国籍を取得した場合は、米国移民国籍法により米国籍を喪失する場合がある。その場合、米国籍を離脱する意志があって外国へ帰化したこ とが立証されなければならない。外国籍を取得した時にその意志があったかどうかを米国政府が確認出来なければ、二重国籍を持ったままとなる。
D.
米国籍喪失・離脱の申請
米国籍離脱については、大使館に問い合わせる。
米国移民国籍法第349条においてアメリカ人は米国籍を放棄する意志を持って自ら下記のような行為を行うと米国籍を喪失する。
- 外国に帰化した場合。
- 外国政府、又はその外国の政府関連機関に宣誓をした場合。
- 米国に敵対する外国政府の軍に属していたり、外国政府の軍人として従軍した場合。
- 自分が持つ外国籍で、その国の政府の雇用を受け入れ、又はその職に就くのにその国への忠誠の宣誓をしなければならない場合。
- 米国外で、米国領事の面前で正式に米国国籍を離脱した場合。
- 米国内で米国籍を正式に離脱した場合。(戦時中のみ)
- 反逆罪で有罪判決を受けた場合。
米国国務省は米国外にいる者の国籍を決定する責任がある。当該者に米国籍を離脱する意志があるかを確認する為に、質問書に記入が必要とされる。米国法によ り、当該者が意志を明確にしない限り、米国籍を保持する意志があると米国政府は判断する。つまり、米国籍を失わなかったと裁定される。
結果として、以下のような場合だけが、米国籍を喪失したと判断される。
- 領事の面前で書面により、米国籍を正式に放棄した。
- 外国政府で政策にかかわる地位の職業に就いている。
- 反逆罪で有罪判決を受けた。
- 国籍喪失行為が米国籍を離脱する意志があったと判断せざるを得ないような行為を伴っている。(このようなケースは非常に稀である。)