2013年4月6日土曜日

他の救済方法を試み尽くす

法律上および 行政上のほかの救済措置をすべて試 み尽くした後でなければ、米国の裁 判所は訴訟を受理しない。

連邦裁判所に管轄権がある事案は、まず連邦地裁が審理 し、次に控訴裁判所が審理し、最後 に最高裁が審理する。(場合によっては上訴 手続きが短縮されることもある。 )
 
救済手段をすべて試みたとい うことは、司法の三重構造の原則を 厳守することだけでなく、行政機関 による救済の可能性も関係する。


最高裁判所は判例に縛られない

 最高裁が判決を下すにあたり、拘束力を持つと思われる過去の判例を、自由に覆したり、回避できたら、司法の自己抑制ではなく、積極主義のように見える。

 しかし、 これも自制の原則の1つである。

 最高裁が、過去に行った決定に縛られ、逃れられないとなると、柔軟性がなくなる。時には、過去の決 定を覆したり、拘束力があると思わ れる判例を無視したりする裁量が必要である。

州法

一定分野における州法の制定の禁止(外国と条約締結、硬貨鋳造)。
憲法第6条「連邦法の優越条項」(憲法・連邦法に反す る州法の制定の禁止)。


憲法修正第10 条→ほかの分野では州法が適用さ れる

奴隷制度と、州が連邦から脱退する権利
南北戦争(1861 〜 65 年)の結果、この2つの問題はい ずれも解決した。

憲法修正第14 条(1868 年)→州法 を無効にする連邦裁判所の権限が拡大
Brown v. Board of Education(1954 年): アーカンソー州 の学校制度での人種隔離を禁じる判決 を出した。根拠は「平等保護条項」。
  
法制度における 連邦政府の役割が高まり

  • 行政国家の台頭、法の適正な過程および平等保護に関する司法解釈 の強制力とその領域の拡大、そして商取引に関する連邦議会の規制権限の同様の拡大
  • 法制度の多くは、今なお州の支配下

合衆国憲法が保 障したあらゆる権利を市民に認めない 州はないが、多くの州は、州憲法の方 がより寛大な権利と特権を市民に付与 していると考えている。
契約上の紛争 のほとんどは、州裁判所が州法を適用 し、裁定を下す。刑事訴訟や不法行為の民事訴訟についても、同じ。
結婚や離婚のような問題を扱う家族法は、州の専管事項と言ってもいい。

救済手段

民事・刑事
民事訴訟は、 2人以上の私人の当事者が関与し、少 なくともそのうち1人の当事者が、制 定法ないしはコモンローの特定の規定 に違反があったと申し立てることから 始まる。

被告は原告に対して「反訴」 を起こしたり、共同被告に対して「交 差請求」したりすることもできる。た だし、これらの反訴や交差請求は、原 告の当初の申し立てと関連性を持って いなければならない。
裁判所は、1つ の紛争から生じるすべての請求を、1 件の訴訟で審理することを好む。


立証の水準

刑事: 合理的な疑いの余地がない。
民事: 証拠の優越。証拠の優越とは、本質的には「ど ちらかと言えば可能性があること」を 意味しており、刑事事件に比べて立証の度合いが弱い。

救済手段


刑事法規は、特定の犯罪に 対して裁判所が科すことのできる罰金 や刑期を例示しているる。同時に刑法は、一部の裁判所が、 犯罪常習者に対して、通常より厳しい 刑罰を科すことも認めている。重罪に対する刑罰は 軽罪に対する刑罰よりも重い。  
民事の場合は、裁判所のほとんどは、普通法による救済手段と衡平法上の救済手段のいずれかを選ぶ権限を認めている。米国の裁判 所は、状況に応じて普通法上の救済手 段も、衡平法上の救済手段も、いずれ も命じることができる。  

民法と刑法の違い、および救済手段 の違いを明確に示す有名な事例は、OJシンプソン事件である。
刑事で無罪に なった後、シンプソン夫人の家族は、不法行為で死亡に至った責任があるとして、民事事件としてシンプソンを提訴した。この裁判の陪審員団は損害賠償金を支払うよう命じた。

判例

先例拘束性(stare decisis)の 原理/判例
裁判所は、法律違反や、法的係争について裁定する。裁判所は、法律解釈を求められる。解釈の際、裁判所は、同位又は上位の裁判所がこれまでに行った法解釈に、拘束される。


→ 裁定に一貫性・予見性を持たせる助け。
訴訟当事者は、自分に不利な判例がある場合、自分の訴訟の事実関係が、先例の訴訟の事実関係と違うことを証明し ようとする。

裁判所によって、法律の解釈が異なる場合
United States v. Balsys(1998 年)
合衆国憲法修正第5条:何人も、刑事事件に おいて自己に不利な証人となることを 強制されることはない → 自分の証言が、 米国以外の国で刑事訴追を受ける原因 になりかねないことを理由に、裁判所 からの召喚状に応じなかったり、法廷 での証言を拒否したりする事例がしば しばあった。
→ この場合も、修正第5条の「自己負罪条項」は適用され るのか?
→ 米国第2巡回控訴裁判 所:適用される
→ 第4・第11 巡回裁判所:適用さ れない
最高裁: 外 国での訴追の恐れは、自己負罪条項に 含まれない。

同じ米国内でも、訴訟が発生した地域 により、事実上法律が異なる。 このような矛盾に関しては、上位裁 判所が解決を試みる。連邦最高裁は自らの決定によって巡回裁判所間の見解の相違を解決できる場合に は、しばしば事件の審理を行うことを 選択する。すべての下位の連邦裁判所に制約を与え、適用される。


コモンロー(慣習法)

法律や憲法による規定が存在しない場合、コモンローによる。
コモ ンローは、司法の決定、慣習、一般原 則の集大成で、イギリス を起源とし、今日も進化を続けている。
多くの州では、コモンローが契約に関 する紛争で重要な役割を果たす。これは、契約上起こりうるすべ ての状況を網羅した法律を、州議会が 制定するのは無理だとみなされている ためである。

行政府

合衆国憲法第2条:大統領の「行政権」

国家の成長に伴い、行政府も一緒に拡大した。すべ て大統領から委任された行政権を執行 し、最終的には大統領に対して責任を負う。

行政府とほかの2つの部門との関係が明確な場合
例:銀行強盗 → シンプル。連邦の刑事罰の対象(米国法典第18 編第2113 節)。
司法省の1部局である連邦捜査局(FBI)が犯罪捜査に当たる。 FBIが1人ないし複数の容疑者を 逮捕すると、連邦検察官が連邦地方裁判所の裁判で、容疑者の有罪を立証する。

工業化社会・ 脱工業化社会→行政府の役割の変化
「危険な」薬物の市場取引を禁止・大気中の「有害」汚染物質の量を制限 → 複雑。議会が権限の一部を行政機 関に委ねる → 食品医薬品局(FDA)が 国内の食品と医薬品の純度をチェッ クし、環境保護庁(EPA)は大地、水、 空気に産業界が及ぼす影響を規制。

各省庁が持つ権限は、連邦議会が法令で定めたものに限られるが、大きいことも ある。その中には、一般的な法律の文言を厳密に定義する規則を定める権限も含まれる。
例:法律が「危険な」量の大気汚染物質を禁止した → 危険とみなされる汚染物 質の内容と量はEPAの規則が決め る。
法令違反の捜査、違反の裁定、罰則を科す権限が、法律によって政府機関に与えられることもある。

裁判所は政府機関に過大な権限を与 える法律を無効とすることができる。
行政手続法(米国法典第5 編第551 節以下参照)は、
① 政府機関が規則を公布し、違反を裁定 し、罰則を科す際の手続、
② 政府機関の決定について、当事者が司法判断を求める方法を規定する。